M&Aを検討されるまでの経緯を教えてください。
春名
そもそも、M&Aといえば引退間近で後継者不在に困っている方が行うイメージがありました。48歳という自分の年齢からすると、あと10年から15年は現役として頑張れると考えており、M&Aをすることは選択肢にもありませんでした。しかし、大学や工業高校で、電気科が減り、専攻する学生も少なくなっていることもあり、「人が足りない・来ない」という課題に直面しました。採用コンテンツの数を増やし、募集対象も広くしたのですが、それでも応募が来るのはわずかな人数で、せっかく応募いただいても選考が進まない人も少なからずいました。そんな中でM&A仲介会社から連絡をいただくことも増え、「自分の会社の価値を知りたい」と感じるようになりました。
そして、M&A相手先候補のリスト見て、「候補がこんなにあるんだ」と感じ、「将来的に良いところがあればM&Aをしていいかもしれない」と考えるようになっていきました。
電研エンジニアリングの将来を考えたとき、「後継者に事業承継する」「M&Aをする」「廃業する」という3つの選択肢がありました。あくまで、「自分が60歳くらいになる頃に良い相手が見つかれば」くらいの気持ちでいました。今の時代、バックアップがないまま零細企業の経営者をするのは非常に困難だと感じています。実際、私自身も父から引き継いで大変な思いをしました。将来的に後継者が引き継ぐケースを考えても、バックアップとなればという思いでM&Aに舵を切っていきました。
複数あった候補からマイスターエンジニアリングに決められた理由を教えてください。
春名
過去に電研エンジニアリングのような受変電設備点検の会社のM&Aを経験されており、業務内容を熟知されていたことが大きなポイントでした。我々の業務内容を知らない会社もあったのですが、マイスターエンジニアリングは明確に「電研エンジニアリングに仲間に加わっていただきたい」と伝えてくれました。また、上場企業であったりオーナー企業ではなかったりする場合ですと、トップの方針が変わったときに組織体制などが大きく変わることがありますが、オーナー企業であるマイスターエンジニアリングは安心できました。
トップ面談の時まで悩まれたとのことですが、何がM&Aの決め手になりましたか?
春名
もともとM&Aは将来の選択肢として考えたこともあり、社員に相談もできず最後まで判子を押すことに迷っていました。そんな中で、最終的にM&Aをする決断に至ることができたのは、マイスターエンジニアリングのM&A時の基本方針が契約締結後も各社を尊重するものであり、当社の希望するM&Aの形と合致していたことによります。今回重視したのは「従業員の今後の生活の安定」と、「人手不足の解消」でした。社員の待遇を維持すること、社名を残すことなどの当社側の希望は、マイスターエンジニアリングではM&A時の基本方針に掲げられており、当然のこととして受け入れていただけました。
M&Aの後、変化はありましたか?
春名
このM&Aで電研エンジニアリングにとってメリットが多い一方、マイスターエンジニアリングにとってどの程度のメリットがあるのか、正直なところ心配になるくらい、M&A後はガラッと変化しました。人手不足に関しては、マイスターエンジニアリングから出向してもらっていますし、中途採用も進んでいます。新しいメンバーが増えたことで既存社員の刺激になっているとも感じます。また人数が増えたことで、お客様に対しても余裕をもって対応できるようになりました。その他、技術研修でのエンジニア交流、経理のシステム化やホームページの改修でもサポートをしてもらっています。個人的には、平野さんはじめ、コンサルタント出身のいわば“経営のプロ”がバックアップしてくださっているので、分からないことがあれば相談できる点も助かっています。
M&Aで悩まれている方へメッセージをお願いいたします。
春名
マイスターエンジニアリングと平野さんに出会えたことを、とても運が良かったと感じています。M&Aにはネガティブなイメージや、高齢な経営者にしか関係がないという印象を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は非常にポジティブなものであり、すべての経営者にとって身近なことです。このことはM&Aを検討する多くの人にお伝えしたいです。